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日米特許庁における特許審査ハイウエイの試行開始  

古谷国際特許事務所ニュースレター136号
(C)2006.5 FURUTANI PATENT OFFICE
2006.5.26



概要


 日本国特許庁と米国特許商標庁は、海外での特許取得の迅速化を図る特許審査ハイウエイを今年7月から試行すると発表した。




内容


 特許審査ハイウエイは、第1国の特許庁で特許可能と判断された出願については、第2国の特許庁において簡易な手続により早期審査を受けることができるようにするものである。下図参照。
(特許庁ホームページより)

 日本特許庁での特許査定を得た場合、対応する米国出願を日本での特許クレームに対応するように補正して、米国における審査を早期に受けることができる。逆の場合も同様である。

 今回の試行は来年の7月までとしているが、実施結果を踏まえて、本格実施への移行を目指している。

 米国特許庁は、本制度による早期審査を受けるための条件を下記のとおりであるとしている。

(1)日本出願に基づく優先権主張を伴う米国出願(PCT国内項出願を含む)であること
(2)少なくとも1以上のクレームにつき日本特許庁が特許可能である旨の判断を出していること。当該許可クレームの英訳および当該英訳が正確であることの宣誓書を提出すること。日米欧のデータベース交換システム(dossier access system)にて、日本語の許可クレームが入手可能であれば、その旨を示すことにより、日本語の許可クレームの写しの提出は不要である。
(3)全てのクレームを、日本での許可時のクレームに合致させること。日米におけるクレーム記載方式要件や翻訳上の問題から違いが生じている場合には、その説明をしたリストを提出すること。
(4)米国出願の審査が開始されていないこと。
(5)特許審査ハイウエイ試行による請求であることを明記すること。
(6)特許査定を含む全てのオフィスアクションの写しとその英訳を提出すること。当該英訳が正確であることの宣誓書を提出すること。
(7)日本での引用例を全てIDSとして提出すること。
(8)継続出願については、再度上記の書面を提出すること。

米国特許庁の発表は下記より
https://www.furutani.jp/news/pph.pdf
日本特許庁の発表は下記URLより
http://www.jpo.go.jp/torikumi/puresu/press_nichibei_highway.htm


まとめ


 米国での権利取得を迅速にしたい場合に使う制度であるが、日本よりも米国の方が先に審査される場合が多いので、日本の出願人にとっての実効性は大きくないかも知れない。現状では、米国の出願人が日本での権利取得を迅速化したい場合にメリットが大きいのではないだろうか。ただし、日本での審査が計画通り迅速化すれば、日本の出願人にも意味が大きいであろう。

 また、審査経過の英訳を提出しなければならず費用を要する点が、少し使いにくい。加えて、特許取得後も、訴訟において英訳などの正確性について攻められる可能性もある。

 しかし、日本において、拒絶理由通知が発せられずに特許されたような場合には、上記のデメリットはなく、かなり使える制度である。この点を考えれば、日本出願の際に、拒絶理由なく特許取得可能なクレームに絞った出願と、拒絶理由が出て反論しなければ特許が取得できないようなクレームを有する出願の2つの出願を行っておくというのも、実務上の対策として考えられる。




NOTES


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